読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

出来損ないの減らず口

毎週金曜日にちょっとしたクレイジーをあなたに

クレーム

ちょうど1カ月ほど前の8月の始め、

俺はお客さんの会社内の非常階段から電話をかけていた。

 

現場で機械トラブルがあったらしく、

整備のために人をよこしてほしいとのこと。

俺は人の調整やお客さんの対応に追われ、電話から離れられないでいた。

 

「一応作業員2日間確保したのですが、2日目午前だけ別現場が入ってまして、

2日目は午後から行かせていただくという形で…」

 

「んなもん、ええ訳ないやろ!!!!2日つったら2日間ともフルで入らんかい!!!」

 

「いや…いろいろな作業員当たってるんですけど、ほんとに厳しくて…」

 

「お前んところの機械がおかしいのに、そんな対応しかせんのかぁ!何とかせんかいや!!!!」

 

 

階段にまで響く、電話から聞こえる客の怒号。

これが仕事とはわかっているが、

なんでここまで言われないといけないんやろう?と自然と頭に浮かぶ。

 

明後日から現場に2日間というだけで、普通に考えたら無理な注文。

そこを色々な人に聞きまわり、頼み回って何とか人を確保したというのに、

午前中抜けるってだけでここまで言わなくていいんじゃないか。

 

作業としては1日で終わるし、2日目は経過観察やん。

なおの事、午後だけでよくないか?

そのくらいのこと、向こうだってわかってるはずやろ。

俺より年上やし、社会人歴も長いんやしさ。

 

大体、キレるってことが建設的な交渉術じゃないよな。

そんな言い方せんでも俺は全力でやるし、キレられると逆にやる気なくすしさ。

なんやねんこいつ…

 

俺は感情が高ぶってくるのを感じながら、

つばが飛んできそうな電話の声をボーっと聴いていた。

 

 

「お前らのものが壊れて、『これません』じゃ話にならんやろ!!」

 

「その通りですね…申し訳ありませ…」

 

「申し訳ありませんじゃないねん!何とかしろよ!誰でもいいから人よこせよ!!」

 

「こちらとしても、最大限の対応はもちろんさせていただくのですが、

 いかんせん作業員がおりませんでして…」

 

「だから!!!ものが壊れて人よこさんっておかしいやろっていうてんねん!

 人が全員埋まってるなんて嘘やろ!誰か呼べるやろ!誰でもええからよこせや!!!」

 

 

 

……なんやこいつ

 

 

 

もうめんどくせぇし、

そこまで言うならやったるわボケが!

 

「誰でもええんでしょ?なら僕行ったりますわ」

 

「え?」

 

「だれでもええいうたやないですか。なら僕行きますよ」

 

 

向こうもさすがに営業が行くという決断をしたことで、

作業員がいないこと、全力で対応をしていることが伝わったのだろう。

電話越しでも向こうの温度が急に下がったのがわかった。

 

「ま…まぁそれならええわ。

ほんなら明後日から秋田工場来てくれ。頼むぞ。」

 

 

 

 

秋…田…?

 

 

 

どうも畑中です。

 

そんな感じで秋田行ってきたんやけどさ、

電話の次の日の夕方頃かな?秋田空港についたわけよ。

 

空港でレンタカーを借りる予約してたからさ、

きょろきょろ周りを見てたら、

「もしかして親族に北京ダックとかいらっしゃいますか?」

って聞きたくなるような、おいしそうに焼きあがったおじさんが

看板をもってニコニコしてたんよ。

 

 

「はたぬかすんですか?」

 

 

!?

 

 

 

「はたぬかすんですか?」

シリに話しかけたらこんな変換になりそうな話し方で、

北京ダックが話しかけてくる。

 

 

「すつぉにくるめぁをつぉめてるんでどぅぞ」

促されるまま車に収容され、近くの店に入る。

 

 

書類を書くよう指示を受け、北京ダックは、

「くるめぁ」なるものを回しに行くと言って外へ出て行った。

 

俺も書類を書き終え、ええ具合の女の子に渡して、

外に出て北京ダックを待った。

 

8月というのにやはり秋田は涼しかった。

風がカラッとしていて、それでいて気持ちひんやりとした風。

冬は雪がすごいのだろうが、避暑地として夏に来るのは悪くないかもな、と思っていると、

北京ダックが車を俺の前に止めた。

 

「さっきエンズンかけたばっけぁりなので、まだ冷えてぬいかもしれないですくど…」

そういって外に出てくる北京ダック。

事務所の明かりに照らされて、照りがすごい。

 

車に乗り込み、馬鹿みてぇに温度の低いエアコンを勢いよくオフにして、

「どもー」

と声をかけ勢いよく走りだす。

 

 

しばらく走って冷静になった時、

俺は思った。

 

 

これは、やべぇところにきてしまった!!!!

 

 

 

奴ら何言うてるかわからんしさ、

クーラーのことやたら気にしてたけど、レンタカーの中にでっけぇアブが2匹も飛んでてそれどころじゃないし、

10分走っても20分走っても一向に景色かわらへんしさ!

 

 

 

 

覚悟はしてたよ。

覚悟はしてたけどさ、

30分1本道走ってるはずやのに、道路標識に毎回「秋田空港右」

って書かれてたら、おや?ループ入ったかな?っておもっちゃうでしょ?

 

酒場の老人に

「迷いの森は右5左3じゃ…」

的な奴聞き忘れたんじゃねぇか?って思っちゃうでしょ?

 

 

 

アブに関しては、こっちもいろんなことがあって精神的にまいっちゃってるから、

「お前も一緒にいくか?」

とかぼそっとつぶやいてニヒルに笑ってたりしてんねんで?

 

 

 

 

完全にキメちゃってるでしょ?

 

 

 

 

へいへい続きはまた来週。